小説風日常描写。
「ザワキタさん、だいじょうぶなんすかぁ?」
後輩のカトウが心配してるのか、どうでもいいのかわからないような口調で聞いてきた。
「さぁ…でもなんか入院だってよ」
「えー!それやばくないですか?だいじょうぶなんですかね?」
午後3時半。
夕立が来そうな曇り空で、まだお盆休みの人も多いのか、人もまばらな人形町を駅に向かって歩いていた。
雨がぱらついてきて、2人とも傘をさす。
「んー、まぁ、やばいんじゃね?医者からもこのままじゃやばいって言われたらしいし」
「えー…そうなんだ…それはやばいっすね…」
数時間前にザワキタに会った。2週間ぶりの彼は、元気そうではあるけど、ちょっと太っていて、そして少しうつむきがちな感じでもあった。
「いやぁ、入院っすよ、まじワロス」
「来るとこまで来ちゃったねぇ…え、それなんて言われたの?」
「なんかぁ、まぁストレスとかから来る症状と、酒で内臓がやられまくってるらしくて、それでまぁ、ちゃんと綺麗にしましょうって」
「なるほど」
「でもこのストレスは絶対会社にやられたやつだからね、もうおれ会社はほんと、辞めるっつか、もういいと思って」
「うんー…まぁなんか、お互いこのままではよくないよねたぶん。親はなんか言ってた?」
「なんかぁ、次見つかるまではがんばれって。でも俺もう嫌っすよ。ほんとこの会社入ってから、酒の量まじで増えたし」
「そっかぁ。まぁでも…考える時間いっぱいあるんだろ?とりあえず次のこと考えたら?…だって、日中暇でしょ?会社休んでるし。何やってんの?」
「いや、おれ、まじでゴジラのことすげー詳しくなりました」
「おい!何やってんねん…」
「ははは、だって暇なんだもん。将来、友達の家奪って、ゴジラ酒場開こうかなって思って。絶対需要あると思うんすよね。よくない?」
「いいとは思うけどさぁ…とりあえず自分の体のこと考えろよ」
「それはさぁ、ほんと考えると怖くなるから。だっていきなり入院とか言われて、金曜から入院ですよ?ほんと、27とかで死ぬんだとか考えたら、すげー怖くて不安ですよ」
「まぁね…でもいんじゃん?27で死んだらロックやん」
「うん、だからねぇ、俺多分、アーティストっつか、芸術家だと思うんですよね、自分のこと。だって、今おれ、いろんな人との会話を全部ノートに書き留めてて、で、そのノート見返しながら、頭の中でいろんなキャラ作ってんすよ。小説のネタにしようと思って」
「ははは。お前アホだわ」
「でも、ザワキタさん辞めちゃったら、いろんな人動きますよね?その根回しとかしてんのかな?」
「そうなんだよね、それを多分してないし、考えてもいないのが、うちの会社の上の連中のダメなところだと思うんだよね」
「ですよね。うわー…やばいなぁうちの会社…」
とりあえずやばいのだった。電車に乗り込んだあとは、お互いどちらともなく黙ってしまった。電車は六本木方面に動き出していた。
続。かない。