高校の卒業式の日のことを書く。
今週のお題「卒業」
高校の卒業式の日。
卒業式の1か月前に、親が県内にマンションを買った都合で、朝は少し早めに家を出る。
自転車に乗って、少し遠くなった高校までの道をぐいぐい進む。
ニキビ面の高校生がスーツ姿でチャリに乗っている、というのは、
はたから見たらきっと、異様に映るのだろうな、と思い、
少しうつむきがちになりながらも自転車を走らせる。
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私のいた高校は、ちょっと珍しい、私服の高校だった。
私服だったから入った、というよりは、その周辺にある学校の中で
「偏差値がそこそこ」
「男女共学」
「軽音楽部がある」
という条件を満たしているのがその高校だった。
校則は、あるようでない、という感じ。
よく言えば「生徒の自主性を重んじている」高校。
とにかく自由だった。
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教室につくと、同じクラスの生徒が何人か集まっている。
制服がないので、こういうセレモニー的な行事の場合、男子生徒はスーツを着ている。
女子は、ワンピースとか、パンツスーツとか、着物の子もいる。
一人、ひときわ目立つスーツの生徒がいる。
まっ黄色のジャケット。
この日のために作ったらしい。
この高校ではこういうことも許されるのだ。
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自由でいる、ということは、
逆に言えば、自分から動かないと何も始まらない、ということ。
高校に入った私は、さしたる目的も持ち合わせていなかった。
「軽音楽部に入りたい」と思っていたにもかかわらず、なぜかバスケ部に入部。
(結局、卒アルにはバド部で写っている。)
勉強も、「自主休講」と言っては部室でサボリ、
かといってバイト頑張ってるかというと別にバイトもせず、
とにかく、これやりたい!とか、そういう意思がなにもなかった。
(モテたい、ってのはあった…。)
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卒業式が始まる。
うちの高校は、卒業式が1部と2部に分かれている。
1部は、いわゆる形式的な卒業式。
(卒業証書授与、とか、あーゆーやつだ)
2部は生徒主導の卒業式。
2部の場合、ライブはあるわ、劇とかミュージカルはあるわ、とにかくすごい。
うちの高校が、一番「うちの高校」らしさを出す集大成。
卒業劇に「主人公の兄」役で出演する。
役はすぐ終わる。
最後には、卒業生が壇上に上がって、「乾杯」の替え歌を歌う。
在校生へのエールとか、先生への感謝とか、そういう意味合いを込めて、歌う。
ひとりひとり退場する。
そのとき、
涙が流れる。
泣くつもりなんか全然なかったのに、突然流れる。
そんな自分に驚きながらも、涙は止まらない。
涙は、次第に号泣になる。
在校生や保護者の間の通路で、顔をくしゃくしゃにして泣いてしまう。
体育館の外で、友達と抱き合って泣く。
そして僕は高校を卒業する。
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なんか、上記のとおり、全然目立てない学生生活だったけど、
自分は自分なりにその学校生活を楽しんでて、高校が好きだったんだなって、
その時にやっと気づいた、という感じだった。
失ってはじめて気づく、というと、すごく陳腐なフレーズだけど、まさにそれ。
引きで見ると、このころのうつうつとした感情とか言いたいけど言えなかったこととかが、大学以降にバーンと弾けて、いわゆる大学デビューにつながっているのだとは思いますが、
その話は、また今度★